人生の栞

中秋の名月にちなんで、我が家のベランダ(物干し台ともいいますが)で
お月見としゃれ込んだことがあります。

ところが、お月見を始めてから数分もたたないうちに、
「えーっと、今日が15日だから、あの書類は明後日までにしなくちゃ…」
「そうか、もうすぐお彼岸法座だな。ご門徒への案内は…」
などと、もうお月見どころではありません。
挙句の果てに電話がかかって呼び出されると、もうダメです。
なかなかお月見とは難しいものです。

その次の日、先輩の僧侶に
「月の前に座ったとたんに、アレコレいろんなことを考えてしまって、
私みたいな者には、お月見なんて無理みたいです…」
と話したところ、
「いやいや、それこそがお月見だよ。」
という答えが返ってきました。
「お月見とは月を見ておしまいになるじゃないよ。月を見ながら、月を見ている自分を見ているのだ」と言われました。

お花見も、きれいな花を見ながらお酒を飲んで盛り上がるのが、お花見ではないそうで、花を見ながら、花を愛でている自分を見ているのだそうです。
さらに続けて、「仏さまにお参りするのも同じだよ」と教えて下さいました。
仏さまにお参りしながら、実は、仏さまに手を合わせている自分に出あうのでした。

なるほど、それでお仏壇の前に座ると急に忙しくなるわけでした!

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